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多摩川ジオントグラフィー

調布市文化会館たづくり 2024.1.26 - 2024.4.21  
撮影:木暮伸也  映像制作:三泊三日

土地の歴史やそこに暮らす個人の記憶をもとに、虚構と現実が入り混じる物語の表現を芸術人類学者の石倉敏明と共に、1年に及ぶ調布のリサーチ等を経て、「多摩川」をテーマに人と自然のかかわりを見つめ、調布の新たな物語を描き出しました。
私たちにとって身近な憩いの場であり、映画や漫画など調布近郊の文化産業にとって想像力の母胎ともなった多摩川。上流から流れてきた土砂や漂流物が堆積するように、野川や仙川を水系に含む多摩川一帯には、様々な歴史や文化が育まれてきました。
尾花と石倉は、資料調査やフィールドワークの手法で、自然、地理、歴史、民俗をはじめ幅広い分野から対象地域を捉えながら、今ここに暮らす人々や、歴史に残らない小さな集団・個人の記憶をすくい取り、ドローイングや彫刻で表現しています。 本展のための1年に及ぶ調布のリサーチや市民への取材を経て、彼らは調布の「川」と、そこから発生した人の営みや風景の変化に注目しました。
川は時代や土地の境界をこえて流れ続ける一方で、生/死や聖/俗を分かつ境界そのものとしても捉えられてきました。本展では川の視点から、調布の人と自然のかかわりを見つめ、調布の新たな物語を描き出します。

3Dアーカイブ
高精細3Dスキャンにより、展示室および連携企画を行ったエレベーターホール、調布市立中央図書館(資料展示)の様子をいつでも、どこからでもご覧いただけます。

 

多摩川ジオントグラフィーとは

 
「多摩川ジオントグラフィー」はリサーチのなかで生まれた造語で、ジオ(geo:その地)+オントロジー(ontology:哲学的存在論)+グラフィー(graphy:書法/画法)を組み合わせています。


プロローグ

春の陽気、夏の熱気、秋の涼気、冬の寒気にさらされた多摩川の水の流れ。その川は東京を貫いて流れ、毛細血管のように武蔵野や多摩の乾いた大地を潤しながら、人びとの土地と万物の歴史をつくる。
 
多摩川には、無数の支流と本流、玉川上水のような人工の運河も流れ込んで、やがて海へと注がれる。それは人間や生き物たち、映画や漫画のキャラクター、妖怪、尊い神仏や人間の目には見えない無数の存在をつないで、過去と未来を滞留させる。
 
かつて美しい布を水に晒し、魚をとり、砂利を採掘した調布周辺の川辺は、いまも市民が散歩や釣り、スポーツ、遊びなど多目的に過ごす憩いの場となっている。多摩川はいまも、人間の世界の外につながる公共の空間だ。そこから多摩川を遡れば、私たちはさらに東京の源流へ、東京というイキモノの血や体液となる、最初の雨粒や地下水にまでたどり着くだろう。今日も、多摩川の川辺に生命の風が吹きぬける。
(尾花賢一+石倉敏明)